AIの活用はビジネスシーンでも広がりつつあります。そこには、業務の効率化やスピードの向上、人件費の削減などの目的があるでしょう。しかし、いざAIを導入するとなったとき、「そもそもAIで何ができるのか」「AIさえ導入すれば大幅に作業効率が上がる」など漠然とした期待が先行するケースが多いようです。その原因は「AIリテラシー」の有無によるものではないかと考えます。本コラムでは、まずAIリテラシーとは何かを定義し、AIリテラシーが低いがゆえに起こる事象や、高めるために必要なことについて、人材育成の重要性も交えながら解説します。
AIリテラシーとは
「AIリテラシーとは」についての明確な定義はありません。しかし、AIを活用するために必要なものとは何かを考えたとき、「AIが何であるのか」「AIで何が実現できるのか」、そして「AIに置き換えられる業務には何があるのか」を判断する能力が必要となります。
つまり、AIを理解し、活用・判断できる能力こそが、「AIリテラシー」であるといえるのではないでしょうか。
たとえば、AIに置き換えれば効率的になる業務を見つけるにも、AIリテラシーが高くなければできません。そして、AIが導き出した結果を分析して活用することができなければ、AIを導入する効果は薄れてしまうでしょう。また、現状のAIは「分類や整理、最適化などが得意である」ということを理解していなければ、顧客との完璧なコミュニケーションを任せるなどの業務をAIに置き換えようとする可能性もあるでしょう。
これらを加味すると、AIリテラシーは、AIに何が実現できて何が実現できないのかを理解し、それらを業務と照らし合わせることで「AIが活用できることを判断する能力」だといえます。
AIリテラシーが低いと何が起こるのか
では、AIリテラシーが低い状態でAIを自社に導入した場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
AIが万能であるとの思い込みが発生
まず考えられるのは、AIが万能であるという思い込みが先行してしまうことが考えられます。AIを導入すれば、すべてが自動的に完結し、期待した成果物が作成されるという思い込みが発生してしまうのです。
そのため、「AIを活用する知識が必要」であることを知らなければ、AI導入が失敗する可能性が高くなります。
AIに期待する結果を明確化できない
「AIで何が実現できるのか」を理解していない場合、AI導入後にどのような結果を得られるのかが想定できません。
本来、「業務工程の作業効率〇〇%上げたいからAIを導入する」など、期待する結果を得るためにはAIが最適であるという判断のもとでAI導入を決定すべきです。しかし、「とりあえずAIを導入すれば作業効率が上がるだろう」と考えてAIを導入すると失敗の原因になります。
つまり、AIリテラシーが低いと「結果を明確化してからAI導入を決める」という手順が踏めないのです。
AI導入直後から完全な結果を求める
AIは、学習を経て成長していくことを理解していなければなりません。理解が乏しいと、AIの導入直後から完全な結果が出ないことに不満を感じてしまうでしょう。
その結果、コストと工数をかけて開発したAIを利用しなくなる可能性もあるのです。
AIに関する一切を委託してしまう
AIリテラシーが低い状態だと、最終的に「完全に委託する」という結論になりがちです。
それは、自社の業務の中でどこをAIに置き換えるのか、どのような結果が欲しいのかを明確化できないため、「詳しい人にやってもらおう」という答えを出してしまうからです。
しかし、AIに限っては、自社にもAIリテラシーが高い人材が必要となります。なぜなら、自社の業務を熟知し、何をAIに置き換えられるか、それにより現場視点でのメリットとビジネス視点でのメリットを俯瞰して観察しなければ効果が現れないからです。AI開発を委託する場合でも、社内の状況と委託先の開発などを調整するAIリテラシーの高い人材が不可欠なのです。
AIリテラシーを高めるために必要なこと
それでは、AIリテラシーを高めるためには何をすればよいのでしょうか。ここでは、AIリテラシーの高い方についてみていきましょう。
AIとは何かを知る
AIリテラシーを高めるためには、なにより「AIとは何か」を理解することが大切です。
たとえば、AIには「機械学習」や「ディープラーニング」などの用語があるといったところからでも構いません。AIを知ることで、実際の業務にAIを導入した場合の状況を理解することができるでしょう。
たとえば、機械学習を使って多くのデータを学習させることで、徐々に成長していくものであることを知れば、AI導入直後に完璧な結果を求めることもなくなりますし、結果が出ないことによってAIを使わなくなるという失敗も避けられるでしょう。
AIの得意領域を把握する
AIが何かを理解したら、おのずとAIの得意分野がわかってくるでしょう。
たとえば、画像や映像の分類・整理、繰り返す作業、煩雑なデータの最適化などが得意分野だとわかれば、自社のどの業務にAIを導入すればよいかが判断できるのではないでしょうか。
また、このようにAIリテラシーが高まると、AIを導入するためには自社の課題の細分化などが重要であることに気づけるでしょう。
AIを適切に活用する力
AIは、すべての完全な答えを出すものではなく、与えられたデータを最適化したり、分類したりするのがAIなのです。
AIを適切に活用し、欲しい結果を得るためには、どのようなデータを学習させるべきかを判断できなければなりません。そのため、その能力を養うこともAIリテラシーを高める要素だといえるでしょう。
AIの結果を判断する力
AIを活用するには、AIが出した結果が正しいのかを判断できる力が必要です。
たとえば、AIが何かしらの答えを出しても、それが自社にとって有益な結果でないならば、学習データが間違っているのかもしれないと判断しなければなりません。
このような結果を判断するためには、データを判断できるデータサイエンスなどの能力も必要であり、これもまたAIリテラシーを高めるための要素だといえるのではないでしょうか。
AI設計・開発についての理解
AIはシステムなので、設計や開発などが必要です。
AIリテラシーとして、必ずしも実際にプログラミングなどを実践できる必要はありませんが、AIがどのように設計・開発されるのかといった流れや、開発手法などを知っておくことは大切です。
たとえば、設計段階で「どの業務でどのような結果を得たいのか」が明確化されていなければなりません。しかし、設計・開発の流れを知らなければ、設計段階からアバウトなシステム作りがスタートしてしまう恐れもあるでしょう。
まず必要なのはAIに精通する人材の獲得・育成
AIを活用するためには、AIリテラシーを高めておくことは必須です。それは、「業務を効率化できる」「複雑なデータ処理もしてくれる」といったアバウトな意識では、AIを導入しても活用できない可能性が高いためです。たとえAIの専門的なベンダーに依頼する場合でも、「AIで自社が何をやりたいのか」が明確化できなければなりません。AIを自社に導入するためには、やはり自社内のAIリテラシーの有無が問われることになるでしょう。
そこで、AIを導入するためにまず必要なのは、AIに精通する人材だといえるのではないでしょうか。もちろん、そのためにはAI人材を獲得したり育成したりしなければなりません。
しかし、これから初めてAIを意識する企業にとっては、AI人材の獲得・育成が難しい場合もあります。そこで、人材育成については、AI人材育成や内製化に成功しているベンダーに育成を相談するといった手段があります。
AI人材を育成して、AIに精通する人材を自社で持つことができれば、全社的なAIリテラシーの向上も期待できるでしょう。社内のAIリテラシーが高まれば、その後AIの適用範囲を広げていく際にも、AIの内製化を図れるようになります。
このように考えると、やはり、AI導入の第一歩は「人材の獲得・育成」だといえるのではないでしょうか。
社内のAIリテラシーを高めれば内製化も図れる
AIリテラシーには明確な定義はありません。しかし、AIを活用するためにどのような知識・技術・人材が必要であるかを突き詰めることでイメージできるものでもあります。社内のAIリテラシーを高めれば、自社に最適な「AI活用」を形にできますし、AIに精通する人材を育成できれば、AIの内製化を図ることも可能になるでしょう。AI人材育成に関するお悩みがあれば気軽にmynet.aiまでお問い合わせください。